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彼女の足元はおぼつかず、地に足がついていない。
夜会は夜を徹して行われている。
そのため大広間の周辺の部屋は休憩ができるように開放されているのだ。痛飲したせいで回らない頭でも目を閉じれば津波のように押し寄せる苦悩、募る焦燥、そして至るのは諦念。
シャーロットはどうしても他人の犠牲の上で、自分が生き残ることに納得することができなかった。 結局、答えは最初から決まっていたと言うこと。 気の迷いからか「もしも自分に
ならば――
シャーロットと言う個人を形成している軸が決断を下す。
誰かのせいにして心の逃げ場所を作ることなど、彼女の信念が許す行為ではなかった。結婚する気はないが、現状、シャーロットには覆せるだけの力などない。
となると覚悟を決め、心を殺してでもバムロールとの結婚を受け入れるしか選択肢は存在しない。 不本意でも決めたからには全力を尽くして夫を支えなければならない。 それがシャーロットが自身に課したシャーロットは落ち気味な気分を切り替えようと、何とか自身に喝を入れる。
「それにしてもバムロール……様はどちらへ……? エリーゼも来るって言ってたのにいないし……」 使用中の札が掛かっていない休憩室を探して通路を歩いていると、元来、妖精族は夫婦になっても人間のような肉欲的な行為は必要としない種族であった。
精神と魔力をお互いに通じ合わせ、幼体を生み出すのが子の為し方だったのだ。 しかし長い時を経て人間と交流が進んだ結果、肉体的な行為が周知されるようになった。それは精神同調よりも強い快楽を得られることが大きな理由である。
そのせいで子を為すため以外でも快楽目的で盛んに行われ、肉欲に溺れる者が増加するようになった。 多くの妖精族を堕落させたと人間族との関係を断つべきだと主張する者も多く、主に対人間族強硬派がそれに当たるのだが、それでも肉欲に溺れる者が多いのは何故なのか疑問は尽きない。 ちなみにバムロールはその中心人物でもある。 「あーここ空いてるっぽい……」 扉には空室の魔族文字が書かれたプレートが釣り下げられている。 考え事をしながら歩いていたせいもあって、シャーロットは大広間からかなり離れた場所まで来てしまっていた。 ようやく一息つけるとホッとして、扉に手を掛けると、中から囁くような声が聞こえてくる。 どうやら使用中だったようで扉を開きかけて慌てて止めるシャーロット。 聞くつもりなど毛頭なかったのだが、室内から漏れ出る忍び声が勝手に耳に飛び込んでくる。 「バムロール様……私は幸せ者ですわ」「エリーゼ、
「まぁ……嬉しい……」
「私はもうそなたの体なしでは生きていけぬ」
途端に自分の頭を強く殴られたかのような衝撃を受けて茫然自失となるシャーロット。 「あの声は……エリーゼ? バムロール……様も?」 怖い物見たさなのか、彼女の右手が勝手に動く。 音も立てずに少しだけ開いたその隙間から見えたのは、ベッドに横たわる2人の姿。 光量を落とされた魔力の灯りが鈍く彼らを照らしていた。 ――― バムロールは陶酔感に浸りきって、愉悦の笑みを浮かべながら色々と考えた結果、とある確信に至った。 妖精王となる俺に屈しない者など存在しない、と。 王と言う肩書きと絶大な権力に惹かれる、光に集まりその身を焼かれる羽虫のようにちょろい者共。 「妖精王様……これからもお側に……」「もちろんだエリーゼ(良い女が手に入った。どいつもこいつもチョロイものだ)」
どうせこの女も権力と快楽目当ての愚か者に過ぎないとバムロールは心の底から軽蔑していた。 体の具合だけは良いので今後も使ってやろうとは思っているが。 恐らく王妃の座が手に入るとでも考えているに違いない。 シャーロットの知り合いのようだが、この勝ち誇った表情が全てを物語っていることに気が付いていないようだ。 人間族は蛮族だが、このような行為を広げた功績だけは讃えてやっても良いだろうと思う。 「シャル……シャーロットは……?」「うむ。残念だが側室にはせねばならんだろう(あの女も美人だ。たっぷり楽しんでやる)」
バムロールは自分の洞察力に関しては強い自信を持っている。 心配そうな表情をして取り繕っているものの、エリーゼがシャーロットを見下しているだろうことも理解しているつもりだ。 このような女には耳障りの良い適当なことを囁いておけば良い。 「ふふふ……可哀そうなシャーロット。本当に憐れでならないわ」「くくく……まもなく全てが手に入る(ぐげげげげ。そう全てがな!)」
心の中ではそう思ったが、前言撤回だ。 エリーゼは心配する素振りすら見せなくなり、その表情は勝ち誇ったものに変わっている。 そもそも友人の結婚相手を寝取ろうとする者など信じられないし信じたくはなかった。
あまりにもおぞましく、忌まわしい。 薄暗くて表情までは分からなかったものの、誰の声かくらいは理解できる。 シャーロットはこれが悪酔いした自分の夢だと思い込もうとした。 「何……これ……」 気持ち悪い。汚らわしい。胸糞が悪い。 唾棄すべき裏切り行為に、胸が張り裂けそうになるシャーロット。体の奥底から熱い物が込み上げてくる。
それは感情的なものか、それとも肉体的なものなのか。 シャーロットは壁に手を付くと、凄まじいまでの嫌悪感と共に思わず全てを吐き出した。 「頭が痛い……夢なら覚めてよ……うう……」 何とか空き部屋を見つけたシャーロットは、ベッドへ飛び込んで枕を顔に押し付ける。 感情を爆発させようとするも気持ちはぐちゃぐちゃに乱れていた。 「決意したと思ったらこれ……? 何? 一体何なのよ!」 泣きたくはなったが、一向に涙が零れる気配はなく、虚しさと悔しさばかりが胸に去来する。 シャーロットは結局、全てが情けなさ過ぎて泣けなかった。そのままどのくらいの時間が経過しただろうか?
ずっとうつ伏せのままでベッドに倒れ込んでいたシャーロットだったが、ドレスが乱れるのも気にせず、ゴロリと仰向けに転がると天井の木目をジッと見つめる。 「もういい……疲れたわ」 抑揚のない声で呟くシャーロットの頭に浮かび上がるのは、自由奔放で言いたいことをはっきりと言うルナの姿。 在りし日の想い出が、今も新鮮なまま彼女の目に映し出される。 「そう……そうね。ルナさんも言ってたわ。『例え我儘だと言われたってさー、時に自分を貫かないといけないことがあるのさー』って」 ふふッとシャーロットの口元が綻び、笑みが零れた。 難しいことは良い。考えているだけでは何も進まない。
行動することが大切なのだ。シャーロットはもう何度目になるか分からない決意を今度こそ固めた。
必ずバムロールを殴り飛ばす!
突然の招かれざる客の来訪に、玉座の間にいる者たちは誰もが困惑の表情を見せていた。 しかもそれが7か国列強同盟軍最強国家、エルメティア帝國の第1皇子ともなれば尚更だ。 シャーロットは頭は大混乱。 今までの側近紹介の時点で既に目を回していたのに、そこへ更なる水滴が落ちたのだ。 心には波紋が広がり動揺がさざ波のように押し寄せてくる。 何なの!? ガイナスが!? 何これ何これ、全くの意味不なんだがー!? 「魔法陛下、まずはお会いしては如何ですか?」「はえ?」 気持ちを察したのか、こりゃ駄目だとばかりにフェイトが助け舟を出した。 そこへ追撃を掛けたのがシャーロットの間抜けな声である。 フェイトは抑えきれないため息と共に、額を押さえつつも再び進言する。 「魔王様……シャーロット様! 使者……に皇子自身が来るとは思えませんが……一応は重要人物です。それにご自身もお会いしたいのでは?」「せ、せやなー! フェイトがそこまで言うなら会おうではないかー! ほれほれ呼ぶのじゃー!」「はッ! その者をここへ連れて参れ!」 フェイトの言葉に、衛兵は敬礼して威勢の良い返事をすると、直ちに立ち去った。 当然の如くシャーロットは、ガイナスと会って何を話せば良いのか全く考えてはいなかった。 と言うかそうできるほどの余裕がなかったと言うべきか……。 側近たちがシャーロットへ向ける視線が懐疑に満ちたものに変わっている。 それを敏感に察知したのか、ヴァルシュが前に進み出て片膝を付き、提案する。 「陛下、他の者は一旦退出させては如何ですか? 御身は我々がお護り致します」「それでは私も残りましょう。戦闘執事として……」 ブラッドもシャーロットの身を案じたようでヴァルシュに同調する。 負けていられないと思ったのか、ブラッドは仰々しく片腕を曲げて頭を垂
シャーロットが目を覚ましたのは、先日までリンレイスが寝室として使用していた部屋であった。 いや、一瞬、刹那の間だけバムロールのものでもあったのだが誰も覚えてなどいないだろう。 まずは引っ越し……となるはずなのだが、ほとんど一般人と変わりのない生活を営んでいたシャーロットに神星樹城に運び込む家具などない。 代々の妖精王が使用して来た家具をそのまま利用するのみである。「あー眠……やっぱりベッドは寝心地が悪いわね……繭の結界で寝ようかしら」 ベッドの上に上体を起こして大きく伸びをする。 一応はふかふかな生地がふんだんに使用されているのだが慣れないものは仕方がない。「おはようございます。魔王陛下。ご気分は如何ですか?」 声の方へ目を向けると、フェイトがにっこりと笑んでいる。 広い室内には誰もいない。 いつもの優しく瑞々しい木の香りが部屋に満ちており、気分自体はすっきり爽快だ。「ちょっと体が痛いんよー! これベッドで寝なきゃ駄目なん? そう言えばリンレ――」 げんなりした表情で愚痴りながらも、シャーロットは元の部屋の主のことを思い出したのだが―― 直ぐに聞かされていたことを思い出す。 リンレイスはシャーロットを補佐するため城内の別室へ移ることとなった。 もちろんバムロールは退去を迫られ、抗議の甲斐もなく力づくで自身の邸宅へと戻されたらしい。「別に繭で眠って頂いても構いませんが……せっかく職人が大樹から削りだして製作した逸品です。使って頂けた方が彼らも喜ぶでしょう」「そっかー。ならしゃーないか」「それと他にも必要な物があれば申し付けください」「あたしは別に今のままで構わんよ」「そうはいきません。魔王陛下として恥ずかしくない品を集め
シャーロットが魔王となったにも拘らず、未だに妖精王の立場にしがみ付いていたバムロールは怒りに打ち震えていた。「私が……この俺が軽んじられていいはずがないッ!」 ここは神星樹城内に宛がわれた彼の私室である。 執務室の主は最早、バムロールではない。 今や妖精王と言う名は単なる肩書きに成り下がっていた。「あの小娘めがッ……本来なら俺がいるはずの場所なのに……クソッ!」 バムロールの怒りは収まる気配はなく、部屋は散らかり放題。 更に彼は近くにあった椅子を思い切り蹴り飛ばした。 それが派手な音を立てて壁にぶつかると大きな音を立てる。「はぁはぁ……何故だ。何故こんなことになるッ! しかもダラス平原でシャーロットがあのエルメティア帝國軍を破っただと……!? そんな馬鹿な話があってたまるかッ!?」 その時、部屋の扉がノックされる音が響く。 全てが気に喰わない彼は、その音にすら過剰に反応し怒鳴りつけた。「誰だッ? 何事だッ?」 誰何の声にすぐさま返答がある。 それはバムロールにとって予想外の人物であった。「リンレイスです。入ってよろしいかしら?」「ああ、入れ……入ってくれ」 名前を聞いて少しは冷静になるバムロール。 一応は前妖精王なので無碍に扱う訳にもいかない。 扉がゆっくりと開かれ、リンレイスが2人の護衛兵を伴って入室してきた。 彼女は部屋を見回すと、眉をひそめて、その惨状にわざとらしいため息を吐く。 バムロールが荒れていたであろうことが容易に推察できたのだ。「して、何用ですかな……?」 努めて穏やかな声色を出そうとしているのだが、長年に渡って妖精王を務めてきたリンレイスには通じるはずもない。「もちろん、妖精王の件ですわ」「妖精王だと……?」 バムロールは、ここで妖精王の話が出てきた意味をすぐさま理解したが、敢えて気がつかない振りをした。 リンレイスは余裕の態度を崩すことなく、微笑みながら先を続ける。「あら? お分かりになりませんかしら?」「……何のことだ? 私は忙しい。簡潔に言ってくれ」 煽りを含んだ声に、バムロールは自らを抑えようとしながらも声が荒くなるのを止められなかった。 彼女の表情から、持って回った言い回しまで、その一挙手一投足が
――闇精霊族領のダラス平原 普段は平穏な緑溢れる豊かな平原に漂うは、血と錆に塗れた臭い。 この地では毎日のように、血で血を洗う激戦が繰り広げられていた。 闇精霊族軍に対するは、人間7か国列強同盟軍の1つコルネトリア王国軍が展開していた。 龍族と巨人族の援軍によって膠着状態が続く戦線であったが、そこへ列強最高と謳われるエルメティア帝國軍が後詰として参戦した。 この数日は牽制ばかりが続いており、本格的な戦いには至っていない。 山岳地帯や峡谷が多い闇精霊族領なので、無理に平地で戦わずに恵まれた天嶮を活かして人間族軍を誘い込めば良いのだが、どうしてもこの平原を手離せない理由があった。 この場所は古くからの彼らにとっての聖地に当たるのである。「シャーロット魔王陛下、此度はご足労頂きありがとうございます」 シャーロットが着陣して早々に天幕を訪ねてきたのは、闇精霊族の族長レイネシア。 跪いて臣下の礼を取り、恭しく頭を垂れている。「うむ。よくぞ、持ちこたえてくれた。一気に蹴散らしてやりましょう」「はッ……」 でき得る限りの威厳を纏ってシャーロットが威勢の良い言葉を吐くが、一部の闇精霊たちから失笑が漏れる。 レイネシアも特に叱責しようともしない辺り、内心ではどう考えているのかも知れたものではない。 とは言え、その気持ちも分からないでもないシャーロットは特に咎める気も起こらなかった。 何せ、援軍として引き連れてきたのは、魔王の側近を含む直轄部隊3000のみ。 更に言えば闇精霊族の中では若いとは言え、族長レイネシアは189歳で、18歳のシャーロットとは踏んできた場数が違う。「おい、魔王陛下に対する態度とは思えん。今、笑った奴は殺してやるから出て来い」 怒りの形相でシャーロットの隣から口を出してきたのは、ヴァルシュであった。 ここにいるのは
ついに来るべき刻が来た―― 神星樹の王城の外に広がる大庭園で魔王就任の戴冠式が行われる。 妖精族の国家リーン・フィアの首都フィアヘイムが帝都になる日だ。 新魔王となるシャーロットは王城内の控室で、柄にもなく緊張してそわそわを抑えられずにいた。 フェイトとブラッドが控える室内で、落ち着いて座っていることも出来ずに、行ったり来たりと忙しない。 「シャーロット様、少し落ち着いて下さい。儀式自体は簡略化されておりますのですぐに済みますので」 少しでも気休めになればと、フェイトが労わりの言葉を掛けるもシャーロットもこれからのことで頭が一杯だ。 戴冠式で何かやらかさないかより、魔王になった後のことを心配しているのである。 「魔王陛下、ご心配には及びませぬよ。陛下の美貌と魅力の前には全ての魔族がひれ伏すでしょう」 ブラッドも何か、よく分からないことを言い出したが、美貌と魅力とは?と自問自答せざるを得ない。 寝言でも言ってんのかとばかりに、シャーロットは呆れた目を彼に向けた。 ようやくシャーロットが席に腰を押し付けた頃、妖精族の神官の1人が儀式の開始を告げに控室へやってきた。 魔呪刻印が発現した刻――と言うよりバムロールを殴り飛ばした時点でシャーロットの覚悟は固まっている。 魔王就任には全く異論はない。 そう。異論はないのだが、流石に荷が重いのでは?とは思っている。 背もたれのない椅子から立ち上がったシャーロットの漆黒のドレスがさらりと垂れて、衣擦れの音が優しく耳に届く。 その大きく開いた背中からは妖精の羽が露わになり、意志とは無関係にゆらゆらと揺らめいていた。 控室は大庭園の会場からほど近い場所に用意されており、シャーロットたちはすぐに戴冠式典場へと到着した。 急ごしらえの祭壇と儀式台にしては意匠を凝らした美しい造りになっており、どれもが妖精の大森林の大樹から削り出された逸品である。 とても急造の会場だとは誰も思わないだろう。 「新たなる魔王! 魔呪刻印が発現せし者、全てを統べる者、妖精族の女傑、その者の名はシャーロット・マクガレル!」 恭しく言い放った龍族の大神官長の言葉に従って、壇上に姿を見せるシャー
シャーロットの魔王就任は決定的な状況である。 翌日に魔王の戴冠式を控え、すぐにでも妖精王バムロールを追い出して神星樹の王城に入ることは可能だ。 だが彼女は自宅でのんびりとした時間を過ごすことに決めていた。 いきなり窮屈な場所に閉じ込められるなど考えただけでゾッとする。「はぁ……やっぱり我が家は落ち着くわねー」 縁側でお茶をすするお婆ちゃんの如く、ソファに座ってコーヒーカップに口を付ける。 尊敬するルナも日当たりの良い庭を見ながら、緑茶なるものを呑むのが好きだと言っていたなと、シャーロットは懐かしい想い出に癒されていた。「シャーロット様、私に命じて頂ければコーヒーなどお淹れ致しますのに」「あーフェイト、いいのいいの。ここは自分ちなんだしー。自分で淹れるの好きだし」 パタパタと手を振って遠慮するもフェイトは何処か不満げだ。 何故か、現在この家にはフェイトとブラッドが当たり前のようにいた。 何でも大事が起きてはいけないからと言う話だが、大袈裟だろうにとシャーロットは気軽に考えている。 ちなみに2人には何度言っても座ろうとしないので、魔王(予定)権限で無理やり休ませるついでにコーヒーも振る舞っていた。「フェイト殿は秘書官故、コーヒーなど淹れられぬのでしょう」「何を言っている。私は何でもこなす。それが秘書官であり、シャーロット様のためなら尚更のことだ!」 ブラッドが煽るように皮肉っぽく告げると、フェイトが嫌悪感を露わにして反論する。 2人の様子を見ていると、バムロールの執務室での一件を思い出すが、これが相性と言う物なのか。 普段から冷静で何事にも動じない彼女しか見たことがなかったので、シャーロットとしては意外な一面を垣間見ることができて楽しいのだが。 2人が火花を散らしている隣で、シャーロットは特に気にすることもなくまったりと歴史の本のページを捲っていた。 別に心の底から嫌い合っているようでもなさそうなので、いがみ合うのも良いだろう。 その時、硬い木を叩く音がして全員の視線が玄関の扉へと集中する。 ブラッドを放置して、すかさずフェイトが扉へ向かうと誰何の声を上げた。 返ってきたのは聞き慣れた声。 シャーロットはフェイトに目で頷いて見せると、来客を招き入れた。「よう、シャル。